幻の川口B級グルメ!?キューポラ定食

埼玉県川口市は荒川を挟んで東京都に隣接する、”埼玉県の玄関”に当たる市です。
人口は2016年現在で58万人を超え、さいたま市に次いで県内2位。
政令指定都市を除けば船橋市、鹿児島市に次ぐ全国第3位、特例市としては全国でトップの人口を誇ります。
実は1995年に県庁所在地であった旧・浦和市に抜かれるまで、埼玉県内の人口数はトップでした。
都内に通勤通学する、いわゆる”埼玉都民”がとても多いのが特徴で、休日の買い物も市内を除けば東京に行く事の方が多いかもしれません。

そんな川口市でしたが、かつては「鋳物の街」として全国的に有名でした。
京浜東北線に赤羽方向から乗車し、荒川を越えて川口に入ると「ようこそ鋳物の街 川口へ」という大きな看板に出迎えられたものです。
還暦世代以上の方には、吉永小百合主演「キューポラのある街」で川口を知った方もいるのでは?
でも若者世代には「鋳物?キューポラ?」の?マークがついてしまうと思われますので、まずはその辺りから説明していきましょう。

地場産業であった鋳物業

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キューポラとは鋳物をつくるために鉄を溶かす溶解炉のことで、鋳物工場の屋根から伸びるキューポラの煙突が、昭和の時代までの川口の原風景でした。
明治以降、地場産業として発展をみせていた鋳物業ですが、その生産物はだるまストーブ等の日用品から、門扉・マンホール・機械部品と様々。
川口駅の駅舎のレリーフも鋳物で作られていますし、実は昭和39年に開催された東京オリンピックで使用された聖火台も、川口市の鋳物師が手掛けたものなんです。

しかし昭和40年代以降は受注が減少し、その後街からはどんどん鋳物工場が姿を消し、取って変わるようにマンションが建てられていきます。
埼玉高速鉄道も開通し、更に便利になった平成以降もその傾向は加速していますが、鋳物工場自体が完全に無くなった訳ではありません。
全盛期には遠く及ばないものの現在でも稼働している工場は残っているので、興味がある方は見学に行ってみてはいかがでしょうか?コークスの燃え盛る炉の炎は、中々迫力のあるものです。

キューポラ定食とは?

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このように鋳物業としては有名な川口ですが、その他にはオートレースと安行の植木の他はこれといった名物が無いように感じます(元市民としての実感を含みます)。
川口市としてもそう感じていたのか、平成20年に開催された「埼玉B級ご当地グルメ王決定戦」に出場し、「キューポラ定食」で見事優勝を果たします。
でもこのキューポラ定食は”イメージ”から生まれた、ご当地グルメとしては特殊なモノ。
それゆえ、川口市民でも知らない・食べたことが無かったグルメであったのです。

キューポラ定食は「鉄骨いなり」と「雷すいとん」の二品で構成されています。
鋳物工場の敷地内には、古来より火伏せの神としてお稲荷様をお奉りしていたのだとか。
鉄骨いなりは鋳物工場のお稲荷様と、“鉄”のイメージから発想され、さらに鉄分を多く含むひじき・桜えび・白ゴマ・人参を食材に使用する念の入れよう!

雷すいとんは、「だご汁」(安行地区で食べられる里芋等の野菜と団子を煮たもの)をアレンジしたもので、こちらはご当地グルメといっても良いモノかもしれません。
2つある団子の内、1つには鶏挽肉と七味を、もう1つには小松菜を練りこみ赤と緑にして、赤がキューポラの炎、緑は安行の植木を表現しています。

素朴で栄養価の高いキューポラ定食。
ランチにも良さそうですが、残念ながら現在では食べられるお店は見つけるのが難しいのが実情なんです。
数年前までは川口そごう地下の「たごさく」で提供されていたのですが、確認したところ既に販売は終了。西川口のラーメン店・ひろやも閉店しています。
せっかく優勝したのにちょっと勿体無い気もしてしまいますね・・・。
期間限定でも良いので、たごさくで復活して欲しいものです。

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